操体の創始者、橋本敬三医師からのメッセージを読み解く

この本は「操体を勉強している、実践している人間が読んでなかったらモグリだろう」と言われている、操体法の創始者、橋本敬三医師の論想集です。

この340ページに「人間悲願の達成へ」という一文があります。「プレジデント」誌 1971年1月号に掲載された、立石電気・未来接近法グループによる未来予想グラフ「社会進捗曲線」という図をもとに、「日本医事新報」第二七七九号・昭和52年7月30日(1977年)に寄稿されたものです。

ここには、悲願の達成へ、というタイトルの後に、20の項目が記されていますが、一番最初に「生きる限り、快適に満足して、充分に生きたい」とあります。これこそが、人間の悲願(どうしても成しとげようと心の底から念じている大きな願いを指す)ではないでしょうか。

写真の下部の文字を書き出し、多少補足します。

技術の進歩は科学からSeed(種)を受け、社会にImpetus(勢い)を与えつつ進歩してゆくというSINIC理論により、人類の発展を科学、技術、社会の3つの局面から分析し、各種データをコンピュータによって予測したもの。人類は太古に「心の世界」に生きていたが、科学技術の発達とともに物質万能の価値観に支配されるに至ったが、やがて再び「心の世界」へと軌道を修正してゆくことが予想される。

SINIC理論とは(外部リンク  オムロン株式会社)


人間悲願の達成へ(生体の歪みを正す)

1.生きる限り、快適に満足して、充分に生きたい。
2.現在まで、その可能性の確保はできなかった。
3.生体(心身)は大自然が生んだ一つの機動する機関(システムオルガン)であり、設計と可能性にミスなし
4.サイパネチックスの考え方でみる。
 (生物・機械を含めての通信や制御に関する統一的な理論。ある情況につき、制御できる変量と制御できない変量とがある時、後者の過去から現在までの値に基づいて前者の値を制御し、最良の状態にすることの、一般的原理の研究)
5.この機関は大地環境の場で、生命エネルギーの入力出力を繰り返す。
6.この機関は構造と運動に規格がある。
7.生命エネルギーの入出力のバランスのため、フィードバックを考える。
8.生活行動のうち自制可能な息・食・動・想の四つが最小限問題となる。
9.しかもこの四つは、機関そのものと環境を含めて、同時相関相補性になっている。
10.フィードバックの満足すべき規準の情報を選択する中枢の要求を探る
11.原始感覚の安定感、満足感に行きつく。つきつめると快、不快となる。
12.機関は構造と運動の両面において、快と不快の聞を可逆的に連動変化する。
13.運動を分析して、快のヴェクトルのフィードバックを行なえばよいことが判った。
14.これで生体のバランス制御が可能となった。
15.この制御法は自力でできる。
16.他力でも可能性はある(過去から現在まで、すべてこれでやって来た)が、原始感覚から見れば、結果論となる。
17.原始感覚は意欲と追求の仕方で、向上または衰退する。
18.心の制御も希望が持てるようになった。
19.何故なら、想(気持と発声と言葉)と動とは同時相関相補性。
20.しかし、このメカニズムを可能にも不可能にもする超エネルギーは確かにある。その制御の見通しは未だ立たない。

(一九七一年一月号「プレジテント」立石電気〈未来接近、社会進歩曲線〉参照。現オムロン
「日本医事新報」第二七七九号・昭和52年7月30日)

いかがでしょうか。これから、この内容を細かく紐解いていく予定です。