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バランス現象のひとつとして
ボディの歪みが、色々な症状疾患の原因になるのは、間違いではありません。しかし、操体では、ボディの歪みをそんなに悪者扱いしていません。
ボディの歪みも、からだが健気にも環境に適応した姿勢だからです。操体には「不自然の自然」という考えもあるのです(これについてもっと知りたい人は、施術+ベーシック講習をどうぞ)。
しかし、何故ボディが歪むのか?
- 姿勢が悪いから歪む
- カバンを片側で持つから歪む
- 猫背だから歪む
- 性格?
- 靴のせい?
- 膝が悪いから?
など、今ひとつ理由を挙げることが難しいと思います。
「姿勢が悪いから歪む」と言えば、
「じゃあ、何で姿勢が悪くなるの?」
「猫背だから」
「じゃあ、何で猫背になるの?」
「う~ん、いつも背中を丸めて歩いているから」
「じゃあ、何でいつも背中を丸めて歩いているの?」
「う~ん・・・・」
操体では、ボディの歪みを正すことにより、バランスと軸をととのえ、二次的に症状疾患を解消することを目的にしているので、何故ボディが歪むのか、という問いに対しても明確な答えがあります。
生命エネルギーのインプットとアウトプット
人間には、他者に代わってもらえない、自律可能(コントロール可能)な営みが4つあります。
息(呼吸)、食(飲食)、動(身体活動)、想(精神活動)
これらの4つの営みのうち、「息」と「食」は生命エネルギーのインプット(入力)と言います。「動」と「想」は、生命エネルギーのアウトプット(出力)と言います。呼吸と飲食は入力であり、身体活動と精神活動は、活動なのでアウトプット(出力)になります。
この4つの営みは「同時相関相補連動性」と言います。
文字の如く、お互い相関し、補いあい、連動しています。
呼吸を例に挙げてみましょう。
立位で呼吸を試すと、足底にかかる体重が移動するのがわかると思います。息を吐くと体重がつま先側に寄り、吐くと踵側に移動するでしょう。また、深呼吸をすると胸郭(肋骨)が動きます。肋骨は脊柱を柱とした鳥かごのような造りになっているので、肋骨が動くということは、脊柱も動いているのです。
面白いのは、どれかの営みが良くなると他も良くなってきて、どれかが悪くなると他も悪くなってくる、という法則です。
操体は、主に「動」を扱うように見えますが、実はこの4つのバランスを診ているのです。現在は、呼吸(呼吸法など)の専門家、食養の専門家、身体運動の専門家、心理カウンセラーやセラピストなど、「息」「食「動」「想」それぞれに専門家がいますが、操体は「息食動想」を別々のものとしてみているのではありません。むしろ一つの事だけに固執するほうが不自然です。もっとも、からだ(自然法則)は、どれか一つの営みが良くなると、他の3つのバランスも高めてくれますが、「固執する」というのは、身体に負担がかかる運動を「努力」と称してやったり、無理な食事制限を行ったりすることです。
原始感覚
原始感覚とは、「快か不快かをききわけるちから」のことです。先程の「固執」にも通じてきますが、自分の感覚を信頼せずに、文献やデータなどを鵜呑みにするのも固執です。現代人は原始感覚が鈍りがちです。特に最近は「食」の情報が氾濫しているため、何が自然なのかわかりにくい状態になっているのではないでしょうか。
例)
からだは穀物を求めているのに、情報に惑わされて特定の食べ物でダイエットをする
その人の体質だと、お酢は控えたほうがいいのに「お酢はからだにいい」と思い、飲み続けている
橋本敬三先生は、今昭宏先生が温古堂に出勤した初日(三浦先生も同席していたそうです)
「今君、患者には原始感覚以外教えるな」
と言われたそうです。これは「きもちよさ」「快適感覚」とも、「生命感覚」とも言い換えられるのではないかと思います。操体は「原始感覚を磨く」感覚の勉強とも言えるでしょう。
息
呼吸は4つの営みの中で、一番生命に直結している営みです。橋本先生の「万病を治せる妙療法」に、寝る前に床の中で行う『ハラの座った男になる法』というのが紹介されています。これは、寝る前にやる「鍛錬」です。呼吸は意識して鍛錬することもかのうですが、生きている限り、意識しなくても呼吸のシステムは働いています。「鍛錬」と「不随意的」は別々に考えるべきです。
橋本先生が現役の頃の操体を、私達は「第1分析」と呼んでいます。第1分析とは、対なる二つの動きを比較対照し、辛い方から楽な方へ動かし、可動域最大か、一番感じがいいところで動きをたわめ、2~3秒後に瞬間急速脱力に導くことを言います。
橋本先生が1976年頃にホテルオークラ東京で、セミナーをされた際の白黒の映像が残っていますが、それをみると、橋本先生も、瞬間的に脱力できない患者に対して、何度も力を抜かせているのです。つまり、瞬間急速脱力は結構難しいのです。そこで、力を抜かせやすくするために、「腰から力を抜いて」とか、「息を吐きながら力を抜いて」という指導をされていたそうです。
それがいつの間にか「操体は腹式呼吸をしながらやる」「腹式呼吸で力を抜く」というように広まったところもあるようですが、橋本先生ご自身は、後年近しい弟子達に、
「呼吸は自然呼吸でいい」
と言われています。これは、呼吸に意識を起きすぎると、感覚をききわけにくくなるからだそうです。
食
人間の食性と歯の数を考えると、成人で親知らずを除いて歯は全部で28本になります。そのうち門歯は8本、犬歯は4本、大臼歯、小臼歯をあわせて16本です。門歯は野菜、犬歯は肉、臼歯は雑穀、海藻、果物、芋類、豆類に適しています。この割合を考えると、
犬歯4:門歯8:臼歯16=肉1:野菜2:雑穀、海藻、果物、芋類、豆類4 という割合を導くことができます。人間の歯の数を考えると、肉類1に対して野菜2、雑穀、海藻、果物、芋類、豆類4が一番適しているのではないかということです。
私の師匠、三浦寛先生は、講習で「食」の講義の際、必ず「躾(しつけ)」の話をされます。昔はどこの家も丸いちゃぶ台があり、ちゃぶ台を囲んで食事をしていました。勿論正座で、姿勢を正して食べるのです。お箸の持ち方がおかしいと、お父さんから怒られます。迷い箸も勿論怒られます。だらだら長く食べていると正座している足が痺れてくるので「しびれをこくまで食べるな」と、怒られます。ちゃぶ台に肘をついても怒られます。食事の時間はマナーを教える躾の時間でもあったのだそうです。先生は、小さいお子さんがいる受講生には、ちゃぶ台での食事を勧めています。
食べ物に関しては、本人の体質や体調、住んでいる土地なども関係してくるので、「これがいい」「あれがいい」という情報に惑わされるのは危険です。「食」は原始感覚を磨くことができる場でもあります。
「頭で食べない」というのも大事です。知人の体験談ですが、若い頃玄米菜食をやったことがあるそうです。そうすると、肌は透き通るようにきれいになり、頭も冴えてくるのだそうですが、玄米菜食をしていない人に対して、見下すような気持ちになったので、やめた、と言っていました。他にも「友達を失うか、玄米菜食するか」と本に書いていた人がいましたが、食は心の問題にも深く関わっているのです。
ある機会があり、外国の方で、玄米菜食を実行している方に会ったことがあります。遠目に見ると確かに肌は白くてきれいなのですが、間近で顔を見たとき、正直言ってぎょっとしました。まだ30代そこらだと思うのですが、顔中皺だらけなのです。加齢によってできる自然な皺ではないのです。
からだにききわけて(原始感覚を磨いて)、好きなものを美味しくいただく、身の丈にあった食を取り入れていきたいものです。
動
身体運動の法則
★書きかけです
