自力自療:
「操体って自分でできるんでしょ」という話をよく聞きます。
はい、自分でできます。
しかし、それにはある条件が必要です。
ある条件とは「本人にしかわからない感覚のききわけには責任を持つ」ことです。
「自分でできる」という言葉を「自分で動く」と勘違いしている場合があります。
自分で動いて治るのだったら、病気になる人はいないし、私達のような専門家はいらないハズです。
なお、一人で行う操体法を「自力自動」と言います。
操体でいう「自力自療」とは「本人にしかわからない快適感覚をききわけ、そのきもちよさを味わう」ということです。感覚は本人にしかわかりません。
それをききわけるのが「診断(動診)」。
きもちのよさがききわけられたら、それを味わうのが「治療(操法)」です。
一人でやろうが二人でやろうが、百人でやろうが、本人にしか分からない感覚をききわけ、味わうのですから、皆「自力自療」なのです。
なお、「本人にしかわからない感覚をききわける力(ちから)」は、「快か不快かをききわける力(ちから)」とも言えます。これを原始感覚と言います。
現代はこの原始感覚が鈍っていることが多く、それが様々な症状疾患の原因となっています。
原始感覚が鋭敏になっていれば、自分のからだの不調や、違和感にすぐ気づくのですが、鈍っているためにそれに気がつかないのです。
私達操体のプロは
「原始感覚を磨く」「原始感覚を呼び覚まし、育てる」
手助けをします。そのお手伝いの中心となるのが
「きもちよさを味わっていただく」ことです。
★「操体」の大きな二つの目的
元々操体は、橋本敬三医師が臨床(患者さんと対面して診断治療にあたること)として用いられてきました。
筋ジストロフィーの患者さん、あるいは膠原病の患者さんのからだが、ボディの歪みを正すことによって、症状が改善していく様子がNHKで放映され、橋本医師の元には、日本中から医師に見放されたような患者さんが集まりました。
本来、健康であれば、自力自療のセルフケアで間に合うのですが、間に合っていない人のために、操体の専門家(医療者)が存在します。
間に合っていないレベルから、間に合っているレベルまで、健康度合いをアップさせるサポートをしているのです。
もう一つは、健康な人(間に合っている人)が病気にならないための「未病医学」。
として、生活に活かし、健康維持増進をはかるというものです。
健康体操、養生法としての指導、セルフケアなどがこれにあたります。
大雑把に考えて、「間に合っている人向け」「間に合っていない人向け」という目的があり、間に合っていない人は、間に合うようになるまで専門家のサポートを受け、その後は健康維持増進のために生活に活かすということです。
また「間に合っている人」は、日々の健康維持増進にますます活かすことができ、健康維持増進のみならず、「身体運動の法則」の体得によって、
パフォーマンスの向上などにも操体を活かすことができます。
この二つを混同しないことがポイントです。
間に合っていないレベルにある方が、自力自動のセルフケアを試みても、悪くなることはないかもしれませんが、専門家の手を借りたほうが、正確に、迅速に「よくなる軌道」に乗ることができます。
実際受けてみる
それだったら、受けてみれば、やってみればいいのですが、やはり受ける前は色々心配があると思います。
その前に、どんな事をするのか、どうやって治るのか、簡単に書いてみましょう
この宇宙には天然自然の法則というものがあり、それを知ると、健康で幸せに暮らせますよ、ということ
- 天然自然の法則を知ること(息食動想)
- 法則違反をすると、60%くらいまでは見逃すけれど、それを下回るとボディーが歪むということ
- どこか悪いからボディーが歪むのではなく、ボディーが歪むから悪くなるのだということ
- ボディーの歪みを正すには「きもちよさ」が一番のくすりだということ
この「きもちよさ」を味わうために、操体指導者はどんなことをするのかと言うと、診断分析を行います。
操体臨床の95%は「診断分析」にあるといっても間違いありません。視診、触診などです。
2010年 Sotai Forum in Madrid でのデモンストレーション。膝窩(しつか)の圧痛硬結の触診。
- 初診の場合は、緊張の緩和と診断分析のために、足趾の操法を行ったりする(当研究所)
足趾の操法のデモンストレーション。立位でベッド、床に正座して行うこともあります。普段は床に正座スタイルが多いです
- 一つ一つの動きを、ゆっくりと表現していただく。操者は動きの安定や連動の促進、感覚のききわけを促すために、介助、補助、言葉の誘導などを用いて助けとする
- 感覚をよくからだにききわけていただき、きもちよさがききわけられたら、そのきもちよさを味わう。
★きもちよく動く、のではなく、ゆっくり動いて、きもちよさがききわけられたら味わう、あるいはきもちよさをききわけた後に「きもちよくからだを操って」ということ。
同じくマドリッドにて(操者三浦先生、モデル畠山)。
左上肢を前方伸展(前に伸ばす)という動きをとり、快適感覚の有無をききわけている。
同上。被験者は伏臥位。膝二分の一屈曲位にとった被験者の両足底に介助を与え、この場合は右足を挙上させることによって快適感覚の有無を問いかけている。
2010年 東京操体フォーラム in 京都のデモより。足関節の内転。
同上。被験者の両手を外転に「決め」、挙上させる。
この場合被験者は左手を挙上し、全身で表現し、快適感覚の有無をききわけている。
後ろに立っている三浦先生の厳しい目線に注目(笑)。
- 本人にしか分からない「感覚」をききわけていただくのが「診断(分析)」
- ききわけたきもちよさを味わっていただくのが、「治療(操法)」
- 操体が自力自療というのもこのため。
★自分で動くから自力自療なのではない。
自分にしか味わえないきもちよさを味わって良くなるので自力自療となる
この時、受ける人がすることは
- ゆっくり動くこと
- (本人しかわからない)快適感覚をききわけ
- (本人しか味わえない)快適感覚を味わう
ということだけ。操者は色々忙しいのですが、受け手はリラックスしていればいいのです。
きもちよさがわからない、ききわけにくい場合は?
急性の腰痛、あるいは動けないなどの場合
- 皮膚へのアプローチ。刺激にならない接触によるアプローチを行います。
- 引っ張る、押す、絞る、捻るなどの皮膚刺激ではありません。