歪みは、からだの工夫です
― 操体が考える「ボディーの歪み」
「からだの歪み」という言葉は、
現在では整体やカイロプラクティックなど、さまざまな分野で広く使われています。
しかし実は、この 「ボディーの歪み」 という表現を早い段階から用いていたのは、操体の創始者である 橋本敬三先生でした。
橋本先生の著書
『万病を治せる妙療法』
『生体の歪みを正す』
『からだの設計にミスはない』
などには、
「ボディーの歪みを正す」
という表現がたびたび登場します。
ただし、ここで言う「歪み」は、
現在一般に言われるような 骨格矯正の意味ではありません。
橋本敬三先生が指していた「歪み」とは、
・日常生活のくせ
・呼吸や食事の乱れ
・身体の使い方
・心の状態
といった、いわゆる 「息・食・動・想」 のバランスの乱れによって生じる
からだ全体の生命的な偏りのことでした。
橋本敬三先生は、人間のからだを機械のような構造としてではなく、
自然の一部として働く生命として捉えていました。
そしてその生命の働きを支えているものとして、
息・食・動・想
という四つの生活の要素を挙げています。
呼吸、飲食、身体運動、そして精神活動。
これらが調和しているとき、
からだは本来の働きを発揮し、自然とバランスを保ちます。
この四つの営みは
「同時相関相補(連動)性」(操体用語)と呼ばれます。
どれか一つの働きが低下すると、
他の三つの働きも低下します。
逆に、どれか一つの働きがよくなると、
他の三つの働きもよくなるという性質があります。
この働きは、100パーセントである必要はありません。
60パーセントくらいできていればOKです。
ただ、これが40パーセント以下になると赤信号です。
他の営みも低下し、それが 「ボディーの歪み」 として現れてくるのです。
操体では、この 息食動想 のうち
主に 「動(身体運動)」 からアプローチします。
その方法は、骨や関節を無理に矯正して歪みを直すのではなく、
からだがききわける「きもちよさ」を手がかりに、
からだ自身の働きに委ねていく
というものです。
その結果として、
ボディーの歪みは自然に正されていく
と考えます。
橋本敬三先生は、このようにして現れた歪みを、
単純に「悪いもの」とは考えませんでした。
生活の中で生まれた偏りに、からだが適応した結果として現れた姿を、
「不自然の自然」 と捉えていたのです。
例えば、からだが傾いて見えるのも、
目線を水平に保とうとするための、
からだなりの健気な工夫であることがあります。
ただし、きもちのよさという感覚は
「想(こころ)」 にも関わっているので、
操体では、そこからアプローチすることもあります。
橋本敬三先生の本のタイトルに、
「からだの設計にミスはない」
という言葉があります。
人のからだは、本来よくできています。
たとえ少し歪んで見えても、それは
からだがあなたを守ろうとしている姿でもあるのです。


